1. パンルヴェ方程式の双有理正準変換は、方程式のパラメータの空間に自然な群作用を及ぼすが、このパラメータ空間の群論的構造を調べることが、パンルヴェ方程式の性質を調べるうえでいろいろな手がかりを与えていると考えられる。パンルヴェ第6方程式の場合には代数函数解を決めることが重要であるが、代数解の出現するパラメータがどこなのかを特定しようとする際、あらかじめパラメータ空間の群論的構造について調べることは重要である。パンルヴェ第6方程式のパラメータ空間は実4次元ユークリッド空間であり、方程式の双有理正準変換群がD4型ルート系のアフィンワイル群としてその空間に作用している。この作用に関する基本領域が、4次元正24胞体を合同に192等分したうちのひとつになっていることを示した。192という数は、ワイル群の位数であることから、合同な正24胞体がタイル張りの意味で実4次元空間を覆うことがただちに導かれる。以上の結果は論文として雑誌に投稿中である。 2. パンルヴェ方程式を研究する際に毎度直面する問題が、パンルヴェ方程式の定義とは何かということである。パンルヴェ方程式は、2階の常微分方程式の分類とあるフックス型方程式の変形の際に独立して出現するが、これらの関係をみる上で重要なのは、パンルヴェ性という観点である。ところが、パンルヴェ方程式の解はパンルヴェ性をもつというマルグランジュの証明法はリーマンヒルベルト問題の解に基づいているが、一般にリーマンヒルベルト問題が解けたといった場合、これは与えられたモノドロミーと確定特異点をもつ大域的セクションが取れるという意味であって、フックス型方程式が常に作れるかどうかはわからない。マルグランジュの証明ではリーマンヒルベルトが解けているということを後者の意味で理解しているようなので、彼の証明法については再検討の余地があるのではないかと考える。
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