平成10年度に複素球面上の積分によってリー球上の調和関数からなる空間に内積を導入し再生核を持つヒルベルト空間を構成した。そして、これらに関する結果は今年度"Hilbert spaces of eigenfunctions of the Laplacian"の題で論文集"Reproducing Kernels and Their Applications"と"Reproducing Kernels related to the complex sphere"の題で京都大学数理解析研究所講究録"再生核の理論とその応用"に掲載された。また、リー球上の調和関数からなるヒルベルト空間の錐フーリエ像および複素球面上のヒルベルト空間のフーリエ像として現れるラプラス作用素の固有関数からなるヒルベルト空間の関係等に関しては、平成10年度にポーランドで開催された解析関数の国際会議で講演した内容を森本光生国際基督大学教授との共著の論文としてまとめ"Conical Fourier transform of Hardy space of harmonic functions on the Lie ball"の題でAnnales UMCS Sectio A Mathematica Vol.53(1999)に掲載された。リー球上の解析関数の調和成分による特徴付けに関する結果と双体リー球および複素球面上の解析汎関数のフーリエ像に関する考察から、ラプラス作用素の固有関数に対してリーノルムで測る指数型と双対リーノルムで測る指数型との関数空間の関係等の結果も論文にまとめた。 さらに、リー球上の解析関数の調和成分による特徴付けに関する結果から、双対リー球上や複素ユークリッド空間上の解析関数が調和成分による特徴付けが可能であることが分かった。このことからラプラス作用素の固有関数だけでなく、より一般の関数が調和成分によって特徴付けられると推測でき今後の伸展が期待できる。
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