本研究の目的である不完全分岐の解明には、2つのパラメータを任意に動かすという難しい議論が必要であった。実数全体でこれらを任意に動かすことはまでは解明に至らなかったが、一方が十分零に近いときには、任意に動かすことが可能であることが分かり、解明することができた。その内容は以下の通りである。 解曲線は、小さいパラメータが零でなくなった瞬間、その位相的構造を変え、無限個の非連結な集合へと変化する。このときの解曲線の概形は、双曲線状である。さらに、これら解曲線は、解の臨界点の個数で特徴づけられる。即ち、各連結集合上では解の臨界点の個数は一定である。異なる数の臨界点を持つ解同士は決して同じ連結集合上には存在しない。この結果は、学術雑誌"Nolinear Analysis TMA"に掲載されることが決定している。 また、掲載予定稿には書かなかったが、空間次元により解曲線の構造が異なることも解明することができた。この内容は、別の学術雑誌で発表することになろう。 今後の課題として、小さいパラメータの「小さい」という条件を外すこと、並びに各解曲線のさらなる精密な構造の解明を行うこと、が挙げられる。いずれの場合も、数値計算による傍証は得られているが、数学的厳密な証明はできていない。大域分岐構造の本格的な解明となるので、局所的な情報(例えば、線形化方程式の解析)だけでは不十分である。ある種の位相不変量を用いるなどして解明することになるであろう。
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