研究概要 |
現在の銀河間空間内の水素ガスはほとんど電離していることがわかっている.一方,ビッグバン後約30万年の時点で宇宙に存在するガスはほとんど中性になったこともよく知られている.すなわち,この間のどこかにおいて宇宙空間内のガスは再電離されたことになる.この宇宙の再電離過程は,その後に形成される様々な天体や現象に対して重大な影響を与える.特に,宇宙の再電離後に形成されるであろう天体とじて重要なものは銀河である.本研究では,宇宙の再電離過程が銀河の形成に与える影響を明らかにすることを目標として,宇宙の再電離過程の詳細を調べている. 本研究では特に,3次元空間内の非一様な密度分布を持つガス雲の再電離過程に注目する.実際の宇宙においては,密度分布は非一様となっているからである.本研究の数値シミュレーションにおいては,3次元空間内の密度分布を適当な仮定の下に,時刻(赤方偏移)の関数として与える.この状態に対し,雲の外側から紫外線を入射する.その強度はパラメータとしていろいろに変化させる.そうして紫外線の伝播とガスの電離状態を無矛盾に計算し,3次元空間内の各点における電離度を求める. このような計算を行い,宇宙の再電離に関して次のような新たな知見を得た. (1) 非一様な密度分布の宇宙においては,一様な宇宙にはない,局所的高密度雲による紫外線遮蔽効果が存在し,それが宇宙の再電離過程に対しても影響を与えていることを見いだした. (2) 密度の非一様性は,紫外線遮蔽効果により,宇宙全体の再電離を遅らせる効果がある. (3) さまざまな時刻(赤方偏移)と入射紫外線強度に対して得られた宇宙の電離度から求められる紫外線吸収量と実際の観測結果を比較することにより,宇宙の再電離は赤方偏移が6〜10の間に起こった可能性が高いことを突き止めた.
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