本研究においては、太陽系の始源物質である炭素を含む分子に対する赤外領域での高分解能分光をおこなうために、パルスノズル法とFT-IRを組み合わせた装置の設計と製作を行った。ノズルからの超音速ジェット中に太陽系の始源物質の候補となりうる炭素クラスターやラジカルを効率よく生成するために、本科学研究費によりパルスNdYAGレーザー、および2逓倍波発生装置を購入した。また、分光装置である現有のフーリエ変換型赤外分光器において、パルスノズルおよびパルスレーザーとの同期をとるためのステップスキャン動作を実現するソフトウエアを購入した。またパルスノズルの開閉の制御及びFT-IRとの精密な同期を維持するために、タイミング・コントローラーとパルス・ジェネレータを設計・自作した。この装置を用いて、FT-IR分光器を用いた気相のCOの時間分解・高分解能振動回転スペクトルの測定に成功した。また並行して、ケイ酸塩鉱物の蒸発素過程を実験室で再現するために、摂氏5000度以上の温度が実現可能なマイクロ波熔融装置に、耐熱石英ガラスによる真空高温光学セルを製作し組み合わせた実験装置を製作し、FT-IRに組み合わせた実験を行い、フォルステライトの蒸発に成功した。今後、これらの実験装置を用いた不安定分子種の生成実験を行い、原始惑星系星雲における星間塵などの固体物質の非平衡蒸発過程を実験室で再現し、赤外・可視分光法を応用することにより高温の鉱物表面の物理化学過程の研究を行うことが可能になった。
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