本研究においては、ケイ酸塩鉱物の蒸発・凝縮過程を実験室で再現するために、摂氏5000度以上の温度が実現可能なマイクロ波熔融装置に、耐熱石英ガラスによる真空高温光学セルを製作し組み合わせた実験装置を製作した。この装置を用いて、石英ガラス及びPeri clase(MgO)粉末を蒸発し、得られた凝縮物のキャラクタリゼーションを電子顕微鏡観察、特性X線元素マッピング、フーリエ変換赤外分光などの手法によりおこなった。この凝縮物の組成はMg:Si原子数比で1:5であり、赤外拡散反射スペクトルからはアモルファスSiO2およびForsteriteの混合物で、特にForsterite微粒子の粒径は0.1μm程度と非常に小さいことが明らかになった。実際に、ガスからの液相を経ることなく鉱物の微結晶を得た例は報告されておらず、近年の赤外線天文衛星のスペクトル観測結果の解釈において重要である。また、実際の星間塵微粒子の生成場であるO-rich AGB星の環境をシミュレートするため、蒸発下のArバッファーガスに微量の酸素を混合した条件下でのMgO+SiO2系の蒸発実験を行った。その結果、組成はエンスタタイトに近く、表面はアモルファスな、コンドリュールに類似した球状の微粒子を得た。この微粒子計138個の粒径分布は非平衡凝縮過程を強く示唆するガウス分布であった。実験系において珪酸塩の非平衡凝縮を実現した例は報告がなく、星間ダストの生成のメカニズムの詳細な検討において重要な結果が得られた。
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