本年度に行った研究によって以下のような成果が得られた. ・分子流天体L1287(IRAS00338+6312)についてVLAで最高分解能(≦0.1″)によるH_2Oメーザー観測が行われ、その分布と速度構造から、メーザー源は半径10AUで10km/sの速度で回転しながらしかも同じ速度で原始星方向に落下しているディスクに付随している可能性が高いことが示された(Fiebig et al.1996). そこで原始星のまわりのガス円盤の速度分布や角運動量分布を明らかにするため、L1287について、野辺山45m鏡を用いて半径数万AUスケールでの高密度ガスの高分解能・高感度観測を行った.その結果、1)高密度ガスは分子流に垂直なディスク状をしていること、2)ディスクの長袖に沿って見い出された大きな速度勾配は、H2Oメーザーによって得られた数十AUスケールのディスクのそれと同じ傾向を示ことから、ディスク状エンベロープの回転であること、3)短軸方向に沿っても見い出された非常に大きな速度勾配は、分子流の向きとディスク状エンベロープとの位置関係から、分子流ではなくこれは半径4700AUでの原始星方向への動的降着運動を見ていることを明らかにした. 降着運動の大きさから中心(星)の質量を求めると約2M【of sun】となる.一方、赤外線源IRAS00338+6312の光度は1100L【of sun】と高いが、もし原始星の光度の全てが原始星へのガスの降着エネルギーによってまかなわれているとすると、これは高い質量降着率によって達成されている可能性が高い.
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