研究概要 |
平成10年度には、サブミリ波観測システムのうちのサブミリ波受信機部分、特に、観測システムの総合性能を支配するミキサマウント部分の詳細設計と試作を行った。まず、性能の劣化がないチューナ固定式ミキサマウントの導入を決定し、試作に先駆けて理論解析による性能のシミュレーション,を入念に行い、ミキサマウント各部のパラメータの最適化を進めた。また、これにより得られた基礎データに基づいて、製作時の加工精度の低下により生じうる性能変化の検討を進めた。 一方で、海外に現存する大口径サブミリ波望遠鏡を短期間のみ利用して、既存のサブミリ波観測システムの世界的な現状を調査し、この波長帯における実観測時に生じうる問題点を整理した。また、このときのサブミリ波観測の結果に基づいて、マグネシウムとカルシウム(これらはともに宇宙に比較的豊富に存在し、しかも紫外線の入射のない星間分子雲中でも比較的容易に電離するために、星間分子雲中の電離状態を支配しうる元素である)の星間分子雲における存在形態を調査し、星間分子雲中ではこれらの元素の大部分が固体として存在しており(気相に存在するものの比率は希薄な星間雲における値のさらに1%以下)、このために星間分子雲中の電離状態は低く保たれているらしいことを論文にて発表した。また、サブミリ波観測によって分子雲の物理状態を診断するための前提となるミリ波での一酸化炭素分子の多輝線観測データを取得し、将来のサブミリ波観測に備えるとともに、予備的な解析を行って国際研究会にて発表した。
|