研究概要 |
グラフのHamiltonian閉路とは,辺をたどる閉じた経路で,すべての頂点をちょうど一度ずつ訪れるようなものである.グラフGの持つHamiltonian閉路の個数をΗ(G)とかく. 私は,Itzyksonによる,場の理論を用いたΗ(G)の積分表示を,ループ展開により評価した.そして2次の段階で,グラフの大域的性質の情報が取り込まれることを見い出した.そして,この評価を,種々の境界条件を持つ2次元正方格子に適用した.その結果は,厳密な数え上げおよびMonteCarlo法の結果とよく一致し,私の得た評価が良い近似であることがわかった. また,グラフの集合Λに対してΗ(G)の平均値を求めるという問題を調べた.特にΛを,‘頂点をn個持ち,隣接頂点の数が3であり,球面上に描けるようなファットグラフ全体'ととった場合に,0次元の場の理論であるランダム行列埋論を応用して,Η(G)を厳密に決定した. この結果を,‘頂点をn個持ち,隣接頂点の数が3であり,種数gの閉曲面に描ける(しかしg-1では描けない)ようなファットグラフ全体'というΛの場合に拡張した.特に種数g=1について具体的な計算を行なった.さらに,すべての種数gの情報を含んだ生成関数の積分表示を発見し,任意のgについて,n→∞での振舞いを決定した. これらの2つの結果から,頂点の数nの大きい極限が,2次元量子重力と中心荷電-2の共形場とを結合させたもので記述されることがわかった.
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