次の世代のガンマ線望遠鏡衛星を目指し、地上ガンマ線観測装置の利点を取り入れた新しい方式として東京工業大学の谷森達と本研究の代表者によって1997年に提案された解像型ガスチェレンコフ望遠鏡が提案されているが、このような望遠鏡の実現性を探ろうというのが本研究の目的である。 「ガスチェレンコフ望遠鏡」の基本デザインは、円筒形の空洞にガスを満たし、ガンマ線の起こす電磁シャワーから発生するチェレンコフ光を円筒の蓋の部分に設置した鏡で集光し、結像させて主焦点に置いたイメージングカメラでとらえる、というものである。 本年度は計算機シミュレーションによって基本性能の評価を試みた。ガスとしてはシャワーをコンパクトにするためには原子番号の大きいものがよく、安定な希ガスとしてキセノンを考えた。約100GeVまでのシャワーを半分以上閉じ込めることができるガスの柱密度として放射長の10倍をとると、1気圧でガスを満たすなら145mの長さが必要である。反射鏡の半径は5mとし、半径2度のチェレンコフ光の像をとらえるため3度×3度の視野をとることにし、ビクセルサイズ0.03度・大きさ1m×1mのカメラを焦点面に置くとした。検出器としては光電子増倍管を想定した。チェレンコフ光の光量は、ほぼ光速の粒子で300〜600nmの範囲に107個/mであり、100MeVのガンマ線シャワーでは約12000個のチェレンコフ光子が放出されが、ガス中の吸収や鏡の反射率、PMTの量子効率を考慮してこのうちおよそ1/6が光電子として検出される。今回は入射ガンマ線の方向を推定するのにガンマ線イメージの重心をとるという単純な方法しか用いることができなかったが、1GeVで0.6度、50GeVで0.1度の角度分解能が得られることがわかった。これは多ピクセルカメラによるイメージの持つ情報を生かす解析を行うことにより大きく改善できると期待できる。
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