素粒子の標準理論を超える現実的な理論を発見することは重要な課題です。研究の目的は、自然界の究極の理論の有力候補である超弦理論を出発点にしてより高いエネルギーで成立する現実的な統一理論を探究することです。本年は、超弦理論が有する一般的な特徴(弦理論特有の相殺機構により無害な異常なU(1)対称性や余分なコンパクトな空間の存在)に着目してそれらの低エネルギーにおける現象論的な意味合いの研究に従事しました。 異常なU(1)対称性に関しては、このU(1)対称性と超対称性標準模型を内蔵する4次元弦模型の有効理論を使って、超対称性粒子の質量の大小関係について考察しました。研究の特色はできる限り模型の詳細に依らない形で解析したことです。具体的には、超対称性の破れの機構を限定せずに、またディラトンに関するいくつかの量は未知の大きさを持った量として扱いました。得られた主な結果は、一般に、スカラー粒子の質量に関してD-項からの寄与は他の寄与と比べて同程度かあるいは大きいことが示されました。そのため、フレーバーが変化する中性カレントが絡む過程を実験と両立する程度に抑制するためには、いくつかのパラメターの間で微調節をしない場合、特定の粒子間で異常なU(1)電荷が一致する必要があることがわかりました。 余分なコンパクト空間に関しては、コンパクトな空間S^1/Z_2について量子場に対して非自明な境界条件をとることにより、低エネルギーでの対称性が、一般に制限されるという機構を、5次元で定義された大統一理論に応用しました。(論文を投稿中)現在、より現実的な大統一理論の構築を目指して研究しています。
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