今年度、我々は、domain-wall fermionの低エネルギー有効作用とGinsparg-Wilson関係式にもとづく厳密な格子カイラル対称性との関係を明らかにする研究を押し進めた。第一に、カイラルゲージ理論の場合の対応関係が、domain-wall fermionを用いて定義されるη不変量とGinsparg-Wilson関係式にもとづいて導入される格子カイラルフェルミオンの有効作用との間の関係として実現していることを示した。この対応は、連続極限で知られていたη不変量とカイラルフェルミオンの有効作用の関係が、有限の格子間隔において成立することを示しており、格子正則化での実現が成功したことになる。この研究で得られた、格子理論における5次元Chern-Simonstermの幾何学的な意味づけについての考察を進めることが次の課題である。 第二に、我々は、domainーwall fermionの構造についての研究を行った。まづ、低エネルギー有効作用の局所性が成立するための条件を明らかにした。さらに、domainーwall fermionの相構造を、flavor-parity対称性の自発的破れに関して調べ、カイラル極限との関係を明らかにする研究を解析的に行った。 一方、格子カイラルゲージ理論の非摂動的構成に関しては、SU(2)×U(1)電弱理論(Weinberg-Salam理論)におけるゲージアノマリー相殺についてトポロジカルな解析を行い、有限の格子間隔で厳密な相殺が可能であることを示すことができた。この結果は、SU(2)×U(1)電弱理論(Weinberg-Salam理論)を格子ゲージ理論として構成できる可能性を示しており、具体的な構成が次の課題となる。
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