研究概要 |
弦の双対性はコンパクト化する内部空間が非自明な幾何学的構造を持つ時に存在する。そこで非自明な背景場でのD-braneの取り扱いが不可欠である。 私は位相的シグマ模型の解析により、boundary stateのdisk amplitudeの具体的解析を行ない、カラビ・ヤウ多様体についての新たな位相不変量を構成した。この開弦に関する不変量と、閉弦の場合のGromow-Witten不変量との関連を明らかにした。更に、この手法を発展させ、従来のミラー対称性に基づく議論が適用できないファノ多様体の場合についてもdisk amplitudeの満たす一連の微分方程式を得、その可積分条件が、位相的場の理論の相関関数のassociativity relationとして、自然に解釈されることを示した。幾何学的立場では、この振幅は、境界を持つstable mapの場合の世界面インスタントンの解析を初めて行なったという点で意義深いものである。以上の成果は学術雑誌“Nuclear Physics B"及び“素粒子論研究"に掲載されている。 次に、brane電荷を持つ背景場での超重力理論と境界上の共形場理論の対応を、弦理論とboundary CFTとの関係に持ち上げて行なうという目的で、anti de Sitter(AdS)空間での弦理論についての解析を行なった。三次元AdSでの弦理論がWess-Zumino-Witten模型によって記述されることを用い、オービフォールド化の手法を使い、IIA型超弦理論のboundary共形場理論として、N=3超対称共形場理論の代数を新たに構成した。この際の、オービフォールド化のZ_2-射影とGSO-射影の競合により、(3,1)型の非対称理論になることを示した。又、この系がbraneの配位としては、M5-braneが垂直に交わり、斜方向にZ_2-固定面を持つ場合に対応することをbrane解の具体的構成から明らかにし、この際、実現されるboundary CFTは、固定面上の理論であることを示した。この成果は学術雑誌“Journal of High Energy Physics"に掲載予定となっている。
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