我々の宇宙はビッグバンモデルによって記述されると信じられている。ただし、この理論には初期特異点の問題がある。ほとんどの人は、この問題が量子重力理論によって解決されると期待している。本研究の目的はこの問題と宇宙の構造形成の問題とを結び付けて考察することであった。現在、量子重力理論の候補としては超弦理論しか存在しない。そこでこの理論の中で、初期特異点の存在しないような宇宙モデルを研究することから出発した。弦理論における量子補正を考慮したモデルの線形安定性を調べることで、新しい種類の不安定性を発見した。さらに詳しくモデルを調べることで、新しい宇宙の創世の機構を明らかにした。 また、最近の観測から宇宙の曲率が負であることが明らかになったが、我々は特異点を持たない開いた宇宙の生成機構を研究し、トンネル効果で宇宙が生まれ、同時にインフレーションが起きうることを示した。一方で、双対性との関連で我々が高次元の中のブレインに住んでいるという描像がどんな宇宙的帰結が得られるかを調べた。その結果、我々の宇宙が無の状態からトンネル効果によって生み出されるという描像が普遍的であることを明らかにした。 今後は、これらの成果を超弦理論の立場から整理統合していく計画である。
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