超巨大磁気抵抗効果および電荷・軌道整列相転移を示すペロブスカイト型Mn酸化物La_<1-x>Sr_xMnO_3(x=1/8)の局所構造解析を行った。この試料は室温相の擬立方晶から中間相(170K-145K)のヤーンテラー歪みの大きい斜方晶を経て、再び擬立方晶の低温相(145K以下)になるという複雑な相転移を起こすことが報告されていた。われわれは、われわれのグループで開発したエネルギーフィルター透過電子顕微鏡を用いて試料のナノメーター領域からの収束電子回折法による観察を行い、低温相が立方晶ペロブスカイト型構造の2x4x4倍の超格子構造を持つことを初めて明らかにした。この超格子構造に起因する超格子反射の強度は極めて微弱なものであり、エネルギーフィルター電顕を用いることで初めて明瞭に検出することができた。この超格子構造は従来報告されていた電荷整列のモデルでは説明できない。ごく最近、この低温相においては電荷整列ではなく軌道整列が起こっていることがX線回折実験から明らかにされている。また低温相では対称性が三斜晶まで低下していることを見出した。さらに、これまで擬立方晶とされてきた室温相においても、対称性が単斜晶以下になっていること、室温相および中間相において存在する散漫散乱が低温相において消滅することなどを新たに見出した。このことは低温相の低い対称性を持つ構造が、それ以上の温度においても局所的な構造揺らぎとして現れていると解釈でき、ナノメーター程度のきわめて微小な電子プローブを用いることにより初めてとらえられたものと考えられる。このようにMn系ペロブスカイト酸化物について多くのきわめて興味深い実験事実を見出すことができた。現在収束電子回折図形の強度データの定量的の解析を行い、原子位置の決定を行っている。 この他にもLaCrO_3およびNaV_2O_5などのペロブスカイト型およびそれに類する酸化物の構造相転移の収束電子回折法による観察を行った。また、動力学回折理論に基づく構造解析ソフトウェアの改良を行い、特こvisualization機能の強化などを行った。
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