収束電子回折法を用いて、超巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型Mn酸化物La_<1-X>Sr_XMnO_3系を調べた。前年度のx=0.12の試料に加え、本年度はxを系統的に変化させて局所構造を調べ、物性との関連について調べた。その結果、x=0.11以上の領域ではx=0.12と同じくorthorhombicの室温以上の相、monoclinicの中間相、triclinicの2x4x4倍の超格子構造を伴う低温相という複雑な相転移を起こすことがわかった。また、中間相では数nm程度の構造揺らぎが存在することを見出した。さらに、x=0.10以下の領域では約340K以上の高温相からそれ以下での室温相への相転移のみが見られ、x=0.11以上とは異なる振る舞いを示した。この室温相ではx=0.11以上と同様の数nmオーダーの構造揺らぎが存在することも初めて見出した。共鳴X線散乱の実験から、x=0.11以上の試料では低温相でのみ軌道秩序が存在し、x=0.10以下では室温相で軌道秩序が存在することが報告されており、今後この軌道秩序とnmオーダーの構造揺らぎとの関係についてより詳細に調べることはきわめて興味深い。 燃料電池のインターコネクタ材料であるペロブスカイト型酸化物LaCrO_3の局所構造解析を行った。エネルギーフィルター電子顕微鏡JEM-2010FEFを用いて数nm程度の局所領域から撮影した収束電子回折図形を、動力学回折理論による計算強度と非線型最小二乗法を用いてフィッティングすることにより、原子位置および異方性温度因子、さらには低次結晶構造因子を精密化することに成功した。熱振動の異方的る振る舞いおよび電荷移動による結晶ポテンシャルの微小な変化を明瞭にとらえることができた。 α'-NaV_2O_5の構造相転移を収束電子回折法で調べ、室温における対称性がPmmnであり、この物質の構造相転移がスピン・パイエルス転移ではないことを決定付けた。さらに、相転移温度直上で現れる散漫散乱、相転移点以下でのきわめて弱い超格子反射、室温付近からあらわれるきわめて弱い散漫散乱を電子回折でとらえることに初めて成功し、この物資の相転移機構について新たな知見を与えた。
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