本研究では超高真空内でGaAs/AlGaAs2次元電子系基板上にポテンシャル変調を加える金属等を制御性よく蒸着することが最も重要な点である。そこで、多くの蒸着源を取り付けられ、かつ容易に高い真空度が得られるようなコンパクトな超高真空層を設計し、作製を依頼し(北野精機)完成させた。次年度に購入予定の反射高速電子の取り付けにも対応している。また、本研究に用いるのに最適なGaAs/AlGaAs2次元電子系基板の分子線エピタクシーによる成長も手がけ、新たに、2次元電子系が表面から25nmと浅い位置にあり、基板表面の金属等の影響が長さのスケールを損ねることなく伝わり、かつ、磁気抵抗等の測定に重要な高い移動度(50〜100m^2/Vs)を持つ基板を数枚成長した。それと平行して、従来から行われている電子線リソグラフィーを用いた手法で、可能な限り短い長さのスケールを導入した2次元電子系の作成を試みた。その結果もっとも短いもので、周期70nm、フェルミ波長の2倍弱の1次元周期的変調を導入した試料の作成に成功し、低温下の磁気抵抗に整合性振動を観測する事ができた。今までに作成されてきた同種の試料よりかなり周期が短い(現在までに報告されている同種の試料の中で最も短い)ため、より高次のそして多数の振動が観測でき、その振幅の大きさの理論との対応を検証できた。本研究の主目的である、金属等の蒸着による方法との併用する可能性を模索しているところである。
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