本年度は主に禁制光近接場光学顕微鏡(SNOM)の開発を行ない、大気中室温動作の完全自作SNOMを完成した。試料基板の内部全反射角以上の角度への放射を集光する部分には既存の油浸対物倒立顕微鏡を用いており、通常の顕微鏡像にてあらかじめ試料を観察できるため、本研究のように小数の試料を測定する上で非常に操作性のよいものとなった。探針-試料間距離の検出機構および、その信号解析方法に独自の技術を使用し、基板上に固定していない(置いてあるだけの)誘電体孤立球(球径2ミクロンなど)のように動きやすい微小物体の安定走査を実現した。また、完全デジタル制御により可変走査速度を行ない、平坦な基板上に球1つというような状況においても、安定かつ高速な走査を実現した。 また、これを用いて孤立球、配列球の近接場領域の固有モードの観察に成功した。特に直径3ミクロンの球については、照射光に波長幅0.03nm以下の波長可変レーザーを用いることにより、球内周回モードに起因すると思われる鋭い共鳴を観察できた。この共鳴での、孤立球と配列球のモードパターンの比較から、比較的小規模な秩序においてもモードが変調を受けることが分かり、このようなモードの直接観察が、球間の相互作用、光伝搬特性を調べるうえで有用であることがわかった。
|