研究概要 |
本年度の主な結果は以下のとおりである。 1. 本学工学部応用物理学科工作室と共同で、低温・高圧下において、光学測定を行うことができる低温クライオスタットを製作した。このクライオスタットでは、圧力媒体に液体窒素(77K)や液体ヘリウム(4.2K)を用いることで、低温での圧力媒体の非静水圧性を避けることができる。また、低温で圧力を可変にするために、高圧のヘリウムガスで、アンビルに加圧する。この圧力可変クライオスタントで、4.2Kにおいて、加圧が行えることを確認した。 2. この圧力可変クライオスタットを用いて、液体窒素温度において、C_<60>およびC_<70>結晶の発光スペクトルの圧力依存性を測定し、発光ピークの圧力係数を求めたところ、それぞれ、-0.067eV/Gpaおよび-0.07eVが得られた。この値を用いて、電子格子相互作用の大きさをあらわす変形ポテンシャルの値を求められた。 3. 室温・高圧下におけるC_<70>結晶のラマンスペクトルの測定を行った。その結果、およそ2.5GPaにおいて、構造相転移に伴うC_<70>分子内モードのトビが観測された。この転移圧力は、これまでに報告されている値よりも、やや大きい。これは、結晶性の違いによるものと考えられ、我々の作製した結晶性の良さを反映していると考えられる。 4. 常温・高圧下におけるC_<70>結晶の光照射効果を調べた。C_<70>結晶は、常温・常圧では光重合反応は示さない。一方、C_<60>結晶では、光重合が観測される。そこで、結晶に圧力を印加し、C_<70>分子間距離を縮め、光照射効果を調べた。しかし、室温において、圧力を6,1GPaまで印加し、Arレーザー光を5kW/cm^2の強度で2時間照射した範囲では、ラマンスペクトルには変化は観測されず、光重合は起こらないことがわかった。これは、重合反応に関与する二重結合がC_<70>では、C_<60>にくらべて少ないことや、室温でのC_<70>分子間の配向が重合反応に必要な配置になっていないことが原因と考えられる。
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