本研究では結晶それ自身が低次元性をもち、これまでに取り扱ってこなかった新しい低次元絶縁性物質を探索することをねらいとしてきた。さらにその光学的性質も明らかにしてきた。2年間の研究計画の中で98年度はその初年度にあたり、育成装置の試作、光学測定系の整備に始まり、数々の結晶育成や光学測定から多くの成果を得た。フォトルミネッセンスのための紫外励起用レーザーとしてHe-Cdレーザーを購入したことで光学測定の上で扱える試料の幅が広がった。以下、実施した項目および成果を示すと、 1) 薄膜結晶育成装置の試作と改良、および、光学測定システムの整備と準備を行なった。この際に組み立てや試料作成にかかる多くの消耗品が必要となり、この費用を用いた。 2) 原料融液からの薄膜結晶育成法を用い、GeI_4を含む一連の分子性結晶の育成を行なった。さらにCaI_2、ZnI_2の薄膜結晶育成にも成功した。また、KI中にZnOの微粒子を混ぜ合わせ、薄膜化させることで光学測定に十分耐え得る試料を作製し、目下、さらに良質の薄膜結晶育成の条件を探し、様々な粒子サイズのZnOの微粒子(1μm以下)の光学的性質を調べている。 3) GeI_4を含む一連の分子性結晶について光学測定を行なった。箇条書きにすると、a)アーバック端での吸収スペクトルの温度変化の測定から非常に電子格子相互作用が強い系であることが判明した。b)吸収スペクトルの測定から、励起子によるとみられる吸収帯を観測した。吸収形状の異常が観測され、励起子吸収遷移の起源の同定他を行ないつつある。c)励起子発光に関する発光スペクトルの測定を行ない励起子の自己束縛の効果を探った。 4) 低次元系薄膜結晶におけるエキシマーレーザー照射効果を調べた。手始めにアルカリハライド結晶に対して行ない、現在低次元系を調べている。アルカリハライドでは固有吸収領域を励起した場合にレーザーパワーのしきい値が存在することがわかった。
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