f電子化合物のうち立方対称性を有するような物資は、しばしばKramers縮退に加えて、軌道の縮退をも併せ持つ。このような軌道縮退を伴う物質では、高次の多極子テンソルが有限の行列要素を持ち、軌道自由度とスピン自由度の絡み合いが新しい物性を引き起こしている可能性がある。そこで、f電子と伝導電子間の相互作用の結果として導かれる電子状態が如何なるものであるかを、多重軌道のアンダーソン模型を出発点として調べる。 まず、軌道とスピンの自由度を時間反転対称性の違いという観点から分類することで、多極子と伝導電子の間の交換相互作用模型を導出した。この模型の電子状態を三次の摂動論的繰り込み群を用いて解析し、新たな非フェルミ液体固定点の存在を予言した。この解析的結果を数値繰り込み群の方法を用いて定量的に議論し、非フェルミ液体固定点のユニバーサルクラスの決定、フェルミ液体へのクロスオーバー、軌道、スピンのダイナミクスなどを明らかにした。 これとは、別にCeB_6のLa置換系に見られるIV相と呼ばれる新しい相において、一次元表現に属する八極子が隠れた秩序変数である可能性を指摘した。
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