研究概要 |
Ybモノプニクタイドやウラン化合物超伝導体などのf電子系の磁性について、比熱測定や変調磁場法によるdHvA効果の研究を行ってきたが、さらに強磁場と希釈冷凍機を利用した磁化の精密な測定が求められている。極低温で磁化の絶対値を決定するには、傾斜磁場下で試料にかかる力を測るのが最良の手段である。磁場中で大きな磁場勾配を作りだし、その中で試料が受ける力を測定し、精度良く磁化を測定するのが我々の目的である。本年度は磁化測定装置の開発を行った。6Tの磁場を発生するヘリウムフリー磁石と、20T超伝導磁石を用いて、液体窒素温度77Kと液体ヘリウム温度4.2Kで測定を行った。試料ホルダーは基本的にはコンデンサーとなる2枚の極板とそれを固定するブロックからなる。バネを用いる方法と、銅ベリリウムの板を使ったカンチレバー法の2通りのホルダーを作成してテストを行なった結果、安定して使えるカンチレバー方式を用いて測定を行なった。磁場勾配を作るため、最初、小さな超伝導磁石を内装して磁場勾配を作る予定であったが、もっと経済的な方法として、試料ホルダーのすぐ下にHoもしくはNiの強磁性体の板を取り付け、これらの磁化を使って磁場勾配を作るという新しい方法を考えた。板の形状も最大の磁場勾配が得られるように調整した。この装置を用いて、希土類モノプニクタイドのCeSb,TbSbやGdAS、ウラン化合物超伝導体のUPd_2Al_3の測定を行なった。いずれの物質でも磁気相の変化やメタ磁性転移に伴う磁化の跳びが観測され、特にTbSbでは過去に報告されていない磁化の跳びを発見した。これに関して、我々はパルス磁石を使った磁化測定で確認した。今後、正確な絶対値の観測ができるようにする予定である。
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