La214系を始めとする高温超伝導を示す酸化物ならびにその関連物質にホールを不純物ドーブしたときに磁気励起に二つのモードすなわち母体のモードと、不純物によるモードが見られることは中性子散乱から指摘されていた。我々は波数がゼロのザブミリ波ESRを用いてこのスピン波の異常を研究した。その結果、過剰酵素ドープしたLa@S22@E2NiO@S24@E2において、中性子散乱で観測された低エネルギーの磁気励起が波数ゼロの励起として現れることを見いだした。その異方性ギャップは母体スピン波の約20%と異常に小さくなっている。ホールの配置に乱れを入れた場合、この励起は線幅が急速に広がることからこの励起はホールが母体結晶中に規則的に配列した時に出来るスピン波状のモードであることが確認できた。この結果はスピン波の異常がホールの近傍で局在化した不純物スピンによる寄与ではなく、不純物の導入により母体全体のスピン波が分裂して出来たものであることを示す重要な結果である。またこの低エネルギーの励起の異方性は、結晶のc面内で4回対称の異方性を示し、その方向はホールの作るストライプの方向と一致している。これはストライプの導入によって結晶が歪んで、スピンハミルトニアンに2次の横成分を生じているかあるいはc面内での磁気的な相互作用が異方的になっていることを示唆しているが、それらの可能性の区別のためにはより詳細な研究が必要である。さらにこのモードが母体の反強磁性の転移点より低温で現れることから、ホールが完全に局在化する温度を評価することができ、母体の転移点の約50%程度になっていることが判明した。
|