強相関伝導系ウラン化合物の極低温領域におけるフェルミ面の研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10740158
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 木村 憲彰 東北大学, 極低温科学センター, 助手 (30292311)
• キーワード: 強相関伝導系 / 重い電子系 / フェルミ面 / 極低温 / ドハース・ファンアルフェン効果 / 磁気抵抗 / ウラン化合物 / 異方的超伝導

研究概要

本研究では、強相関伝導系ウラン化合物の典型物質であるUPt_3のフェルミ面を明らかにすべく、ドハース・ファンアルフェン効果および極低温磁気抵抗の実験をおこなった。極低温領域における磁気抵抗の測定には、1pΩ(1×10^<-12>Ω)の極めて微小な抵抗を測定しなければならない。そこで、東北大学極低温科学センター実験棟のシールドルームに建設した希釈冷凍機をもちいて微小電流による抵抗測定装置の開発を行った。従来の交流法の欠点を克服した直流4端子法で微小電圧を検出することにより30mKでの測定に成功し、オープン軌道の有無といったフェルミ面のトポロジカルな性質を明らかにした。またドハース・ファンアルフェン効果からは主要フェルミ面を全角度範囲で観測することに成功した。この主要フェルミ面は電子の静止質量の約100倍の有効質量を持ち、最初にUPt_3のフェルミ面が観測されて以来、10年以上にわたって観測されていなかったものである。これら詳細な実験は、バンド計算から予想されるフェルミ面と極めてよい一致を示し、磁気抵抗との結果を合わせ、最終的にUPt_3の5f電子の遍歴的性質を明らかにした。強相関伝導系ウラン化合物の典型物質のフェルミ面が明らかになった意義は大きい。
来年度は今年度得られた成果をもとにして、メタ磁性近傍のフェルミ面の変化、圧力応答などを詳細に研究する予定である。また、他の典型物質についての実験も行う予定である。

研究成果

• [文献書誌] J.Kitagawa et al.: "Anisotropic Magnetic Phase Diagram of the Kondo-lattice Compound Ce_3Pd_<20>Ge_6 : Observation of Antiferromagnetic and Quadrupolar Ordering" Phys.Rev.B. 57. 7450-7453 (1998)
• [文献書誌] Y.Koike et al.: "Long Range Antiferromagnetic Ordering Observed Below 20mK in the Heavy Fermion Superconductor Upt_3" J.Phys.Soc.Jpn. 67. 1142-1145 (1998)
• [文献書誌] H.Tou et al.: "Nonunitary Spin-triplet Superconductor in UPt_3 : Evidence from ^<195>Pt Knigth Shift Study" Phys.Rev.Lett.80. 3129-3132 (1998)
• [文献書誌] Y.Haga et al.: "High-quality Single Crystal Growth of Uranium-based Intermetallics" J.Magn.Magn.Mat.177-181. 437-438 (1998)
• [文献書誌] Y.Haga et al.: "Purification of Uranium Metal using the Solid State Electrotransport Method under Ultrahigh Vacuum" Jpn.J.Appl.Phys.37. 3604-3609 (1998)
• [文献書誌] N.Kimura et al.: "Observation of a Main Fermi Surface in UPt_3" J.Phys.Soc.Jpn.67. 2185-2188 (1998)
• [文献書誌] N.Kimura et al.: "Observation of a Main Fermi Surface in UPt_3 Studied by de Haas-van Alphen Effect" to be published in Jpn.J.Appl.Phys.Suppl.(1999)
• [文献書誌] N.Kimura et al.: "Magnetic Properties of R_3Pd_<20>Ge_6(R=Pr and Nd)" to be published in Physica B. (1999)