研究概要 |
今年度はδ【approximately equal】0.06,0.08のLaTiO_<3+δ/2>をフローティングゾーン法で作成し、光反射率を測定することにより、電子構造の温度依存性を明らかにした。δ【approximately equal】0.06の試料はT_N=112Kで反強磁性オーダーを示す金属であるが、室温から温度を下げてゆくと赤外域の反射率は徐々に増大し、光学伝導度スペクトルはそれに伴ってインコヒーレントなものからややコヒーレントなものへと変化する。T_N以下での温度変化はほとんどなく、これはSpin Density Waveの秩序ができたことによるキャリアー数の減少と散乱時間の増大が相殺することによるものであると考えることができる。T_N直上での散乱時間のエネルギー依存性を拡張ドゥルーデ解析によって見積もると、【planck's constant】ω【greater than or equal】0.1eVの全領域で【planck's constant】/τ(ω)【greater than or equal】 【planck's constant】ωとなっており、0.1eVという低いエネルギースケールにおいてさえ既にキャリアのコヒーレントな運動は実現しておらず、準粒子描像は破綻していることが明らかになった。 また、δ【approximately equal】0.01付近の試料を作成し、海外の研究者と共同で、共鳴X線散乱による軌道秩序の観測を試みたが、軌道秩序による超格子反射は観測されず、磁気秩序があるにもかかわらず軌道自由度が揺らいでいるという極めて異常な結果が得られた。
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