研究概要 |
分子性機能物質の核磁気共鳴というテーマで、磁気共鳴用、同位体置換サンプルの合成、また物性用の広幅NMRに適した、NMR,NQRのシステム開発を目的としてプロジェクトを遂行してきた。装置の開発に思った以上に時間がかかったが、何とか、今年度末には高機能汎用パルス発生器、超高速(40MHz 12bit dual channel)AD変換システムの完成ができそうである。現在のところ、ハードウェア単体での性能は当初の目的を達している。今日の測定においては、計算機による測定系の集中管理が必要であり、作成したハードウェアと計算機用のドライバはセットとしてつくらなければその利用価値は少ない。そこでWindows NT/2000でこれらのハードウェアを制御することのできるドライバも合わせて開発した。ハード基板は、分子科学研究所の装置開発室の豊田氏にコンタクトをとれば入手可能であり、またドライバは、Internetを通じて配布の予定で、これにより、広幅NMRを研究者に広く利用、普及してもらえることを考えている。この装置の部分の成果については、豊田氏が、すでに技術研究会等で発表している。また、実際の測定は、装置開発が手間取ったため、既存設備を用いて先行して行うことにした。その中で、分子と金属イオンのhybridの物質であり、その分子のp軌道と金属のd軌道が相互作用して、多彩な物性を発現する(DMe-DCNQI)_2Cuについて^<13>C、^<15>Nの選択的同位体置換NMRでその多彩な物性の発現機構について知見をうることができた。その成果の一部はすでに論文に発表し、また最終報告を投稿予定としている。さらに、強相関系有機超伝導体k-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]BrにおいてHをD化することによりMott境界をSCANできることを発見して現在その^<13>C置換体の合成に着手ちている次第である。この部分については、今後、研究成果が出るものと期待している。
|