巨大磁気抵抗(GMR)効果を利用した単一のサブミクロン磁性細線の磁化過程の研究を行った。近年、微細加工技術の進歩にともない、メゾスコピック磁性体の研究が盛んに行われるようになった。しかし、試料体積が極端に小さいために通常の磁化測定法では一つの微小磁性体や単一の磁性細線の磁化を測定することは不可能である。そこで通常は、同じ形状のと考えられる試料を多数作製し、その集合の磁化を測定している。しかし、この方法では、個々の磁性体の大きさと形状のばらつきによって、単一の磁性体の特徴が隠されてしまうことが多い。そこで、本研究ではGMR効果を利用した磁化測定法を提案した。GMR効果は非磁性層を挟んだ磁性層の磁化の向きによって電気抵抗が大きく変化する現象である。このことは、逆に電気抵抗の測定から磁区構造を推察する事が可能であることを意味している。この方法は本質的には電気抵抗測定法であるため非常に簡単であり、時間分解能が高い。これらの特徴により、これまで不可能であった、単一のサブミクロン磁性細線の動的磁化過程を研究することに成功した。 (1)磁性細線中に導入した人工的な括れによって、磁壁の移動が制御できることを示した。 (2)GMRの時間変化を測定することで、サブミクロン磁性細線の磁化反転が単一の磁壁の移動によって起こることがわかった。 (3)この際の磁壁の移動速度(〜200km/sec.)および移動度を決定した。
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