スピン・ラダー物質Sr_<14-x>Ca_xCu_<24>O_<41>、における圧力下での物性測定はこれまですべて静水圧力下でのみ行われてきており、末だ一軸圧力下での物性測定は全く行われていない。この物質の構造は極めて異方的であり、一軸圧縮の物性におよぼす効果は非常に大きいことが期待される。静水圧力下での電気抵抗の異方性の実験からは、超伝導は系が1次元から2次元に向かうときに起こることがわかってきた。これはラダー間の相互作用を大きくすることに対応するので結晶のa軸圧縮に対応している。したがって、本研究において予想される結果は、結晶のa軸に対して一軸圧力を加えたときのの電気抵抗の大きな減少であり、さらには超伝導の発現も期待される。今のところ超伝導は静水圧力下でのみしか発現しておらず、一軸圧力下で超伝導が見いだされれば、この系の超伝導が1次元から2次元のクロスオーバーで起こることの決定的な証拠となる。現在では、まず、一軸圧力下での測定系の整備を行っている。この際、問題となるのは、実際に加えた一軸圧力を正確に測定することである。通常、クランプ式で荷重を加えて保持する形式をとると、低温にしたときに高圧装置自身の熱収縮のために、室温で加えた荷重より低い荷重になってしましい、結果として、試料にかかる圧力が低下し、実際に加えた圧力が決定できないという問題がある。この決定的な問題を解消するために、温度変化中も常に一定圧力でしかもその圧力が正確に測定できるように、ヘリウムガス圧を利用した小型ベローズと、油圧を利用したミニシリンダの両方で装置開発を進めている。これら2つの方式だと、ガス圧あるいは油圧が正確にわかるため、荷重が正確にわかり、したがって、荷重のかかる試料の断面積がわかれば、正確な一軸圧力が決定できる。来年度前半には、装置が完成する予定である。
|