擬2次元金属錯体化合物(Et_nMe_<4-n>Z)[Pd(dmit)_2]_2は、擬2次元有機導体であるκ-(BEDT-TTF)_2Xと同様に伝導面内の分子が強く二量化していて、反強磁性、超伝導を含む複雑な相図を示す。後者の磁性と伝導性は圧力が高くなると二量化が小さくなり有効相互作用も弱くなることで説明できた。ところが前者の場合、カチオンを小さくすれば(化学的圧力が高くなると)逆に伝導性は悪くなり、反強磁性転移温度は高くなる。この違いは前者が1次元的なバンドと2次元的なバンドをもち、カチオンが小さいほど1次元的なバンドが効いてくるためであることが拡張ヒュッケル計算で示唆されていた。絶縁相での磁気モーメントは大きいので電子相関が強いことが予想されるので、強結合極限から摂動計算を行い、磁性と伝導性が矛盾なく説明できることを示した。 1次元π-d電子系、CoPc(AsF_6)_<0.5>は似た結晶構造をもつNiPc(AsF_6)_<0.5>と違って3/4フィルドバンドのπ電子が局在d電子と強磁性的に結合するためにモット絶縁体になっている。局在スピンの反強磁性相関が静的とみなせる場合、伝導電子間の次近接相互作用がどんなに弱くても絶縁体に導くことがわかった。現実には局在スピンが量子的に揺らいでいるので、局在スピン間に異方的な交換相互作用を考えて、密度行列繰り込み群というもっとも数値的に信頼できる方法で電荷ギャップを計算した。量子揺らぎがあると電荷ギャップはとても小さく、付加的な相互作用か不純物効果が実際には効いているかもしれない。
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