研究概要 |
今年度は、特に梯子鎖を有する銅酸化物の磁性に注目して実験を行った。物質としては主にLa_<14-X>Ca_XCu_<24>O_<41>及びLa_2Cu_2O_5を用いて行った。前者はCu^<2+>モーメントの2つ足梯子、後者は4つ足梯子を有する物質である。理論的には梯子の足が偶数個の時にスピンギャップが存在し、ギャップの大きさが足の数とともに減少することが予測されている。 La_<14-X>Ca_XCu_<24>O_<41>系では、La_6Ca_8Cu_<24>O_<41>大型単結晶を育成し中性子散乱実験を行った。パルス中性子を用いてシングレット基底状態からトリプレット励起状態への磁気励起を高エネルギー領域(〜200meV)まで測定し、エネルギー_運動量空間での分散関係を完成させた。その結果、最近接Cu^<2+>モーメント間の相互作用のみでなく、4スピン相互作用を導入することにより、より良く実験結果を説明出来ることがわかった。La_2Cu_2O_5では、大型単結晶育成をすることが出来なかったため、粉末試料を用いてミュオンスピン緩和測定を行った。その結果、低温で磁気秩序が存在することがわかり、4つ足梯子間の相互作用が充分大きいことが示唆された。 また関連物質として2次元正方格子を有する(La,Sr)_2CuO_4系の中性子散乱による研究を行った。特に絶縁体でスピングラス相が存在するSr低濃度領域での研究を行った。反強磁性相とスピングラス相の境界物質であるSr2%の単結晶で実験を行ない、磁気構造に関して可能性の高いモデル(diagonal stripe構造の核を形成しているというもの)を提唱した。
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