稀釈合金系の磁性のモデルとして研究が始まったスピングラスモデルは、競合する相互作用を原因として複雑で興味深い振舞いを示すさまざまな系の研究の際にも重要なモデルとなっている。その重要性は今日、物性物理に留まらず、最適化問題、神経網、蛋白質ほかの分野でも認識されている。 このようなスピングラス系に対して、臨界現象の研究に際して有効な場合が多いことが本研究代表者により明らかとなった「非平衡緩和法」を応用し、解明することが本研究の目的である。 本研究では平成10年度中に下記の成果が得られた: 正方格子および立方格子上のスピングラスモデルについて、常磁性強磁性相転移を精密に調べた。その結果、まず、相境界がこれまで以上の精度で解明された。また、磁化の非平衡緩和指数はユニバーサルでないことが明らかとなった。 また、立方格子上のスピングラスモデルのスピングラス転移、スピングラス相でのクローン相関関数の非平衡緩和のようすが明らかとなった。 これらの成果は、論文としてJournal of Physical Society Japan誌に掲載されたほか、1998年にパリで催された統計物理学国際会議、物理学会分科会・年会で講演し公表した。また、本研究の成果も含む非平衡緩和法についての包括的な解説を執筆し、日本物理学会誌に掲載される予定である。 以上、当初の研究計画で目標とした成果が得られ、平成11年度に向けて順調に進んでいると考えている。
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