マイクロエマルジョンとして知られる水、油、界面活性剤の混合物の圧力誘起構造相転移について、その静的、動的振る舞いを中性子小角散乱(SANS)及び中性子スピンエコー(NSE)により実験的に明らかにするため、自動加圧ポンプの製作を行った。これまでのポンプでは最高到達圧力は約1000気圧であったが、我々の研究対象となるマイクロエマルジョンでは1000気圧までに構造相転移は起こるものの、それ以上の圧力においても構造変化が起こる可能性が残されている。そのため、最高到達圧力目標を5000気圧とし、電動ポンプを作成した。圧力はひずみゲージで測定し、設定圧力以下であれば電動ポンプが作動し自動的に加圧を行う。ポンプの完成後加圧テストを行い、到達圧力2000気圧を確認した。また既存の中性子散乱用高圧力セルとの組み合わせも問題ない。今後さらに加圧テストを行い、来年度4月以降の中性子のマシンタイムにおいて実験を行う予定である。尚、この課題は継続課題として来年度も採択が決まっている。 また、実験データの解析を行うため、パソコンを購入し、これまでに得られている中性子散乱データなどの解析を行った。静的構造の様子をSANSにより調べた結果、常圧でのdroplet構造から圧力を上昇させることにより、lamellar構造とbicontinuous構造の2相構造へ相転移することが明らかになった。さらに、温度変化による相転移との比較により、温度変化と圧力変化では現れる構造はほぼ同様となるものの、構造形成メカニズムが異なることが明らかになった。NSEによる動的構造の研究からは、高温相と高圧相では界面活性剤膜の弾性率が異なることが明らかとなり、高圧相の方が硬い膜を形成していることがわかった。この結果はSANSの結果から考えられる構造形成メカニズムの違いを説明する一つの具体的な例であると考えられる。
|