研究概要 |
研究成果概要 近年,計算機の高性能化,低価格化,操作性の向上などにより従来ハード的限界から実用的ではないとされてきた大規模統計モデルを利用した情報処理の可能性が情報科学・工学の分野で活発に模索されるようになりつつある.このような観点から本研究では情報通信の基礎技術である誤り訂正符号に関して,従来実現困難とされてきた大規模統計を利用する符号化の可能性について検討した. ・ 一般に誤り訂正符号の問題はベイズ統計を用いて定式化することが出来る.しかしながら,この定式化では多数のビット変数が相互に複雑に依存しあう事後分布として情報が表現されるため,従来の情報理論的手法ではその性能の平均描像を解析することは困難であった.本研究では,ベイズ統計による定式化が多体相互作用を行うイジングスピン系の統計力学と同一視出来ることに着目し,Sourlas符号,Gallager/MN符号と呼ばれる2種類の符号に関してその平均性能を統計力学的手法を用いて評価すること,更に統計力学の平均場近似法を用いて高速かつ高性能の近似的復号化アルゴリズムを構成することに成功した. 特に評価すべきポイント 今やBCH,RM,RS符号など代数的符号が全盛であるが,最近,Turbo符号,Gallager/MN符号の再発見などによりベイズ統計に基づく相互作用を利用した誤り訂正符号が再び注目されはじめている.本研究は新しい方法論に基づきこれらの符号がなぜ非常に良好な性能を持つのかについて明解に理論的説明を与えた.さらにこの結果により従来試行錯誤的に行われていたこの種の符号の構成に理論的な指針を与えることが出来た.
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