研究概要 |
前年に引き続き,統計力学的手法を用いてGallager/MN符号の解析を行った。 Gallager/MN符号は情報ビット,ノイズビットに関してそれぞれK体,L体,あわせてK+L体相互作用を行う希釈ランダムスピンモデルにマップすることが出来る.前年の研究ではK,Lが系全体で一様な場合にそれらをパラメータとしてシステムの性質がどのように変化するのかについて平衡統計力学的性質ならびに動的性質の両方の観点から調べた.今年度はこの結果に基づきパラメータK,Lをばらつかせることでどのような効果が現れるのか解析を行った. 前年度の研究から得られた知見はi)K【greater than or equal】3あるいはL【greater than or equal】3の符号は最適に復号化されればShannonによる理論的性能限界を達成するが,動的な観点から実時間での復号は難しいこと,ii)K=L=2の場合は最適に復号化された際の性能はK,L【greater than or equal】3の符号より劣るが動的な観点から見ると完全復号解への引き込み領域が大きなダイナミクスを構成出来るので実時間での復号が可能であること,である.それに対し,K,L【greater than or equal】3の値に限ってばらつかせると平衡状態の性質は均一な場合と変わらないが動的な性質,特に復号解への引き込み領域の大きさが変化することが分かった.また,引き込み領域の大きさは一般にK,Lの増加につれ小さくなることも分かった.これによりパラメータを適当にばらつかせることで符号の性能を高めることが可能になることが明らかになった. 更に,これらの知見に基づきこれらの符号は特別なパラメータを設定することで公開鍵暗号方式として利用できることを示した.また,その統計力学的な性質に関して簡単な考察を行った.この研究に関しては現在も鋭意継続中である.
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