研究概要 |
液体を徐冷すると融点付近で固化して結晶になるが、急冷すると融点以下の過冷却状態でも液体相が安定に存在する.さらに温度を下げると液体的なアモルファス構造が凍結された固体、つまりガラスと呼ばれる状態になる.ガラス転移と呼ばれるこの現象に関してはこれまでに膨大な研究がなされているが,いまだその本質的なメカニズムについては解明されていない.我々は2次元,及び3次元ソフトコア粒子の大小2成分混合物に対して分子動力学シミュレーションを用い,動的不均一性という新しい概念を導入することによって以下の点を明らかにした. 1. ガラス転移近傍における動的不均一性を可視化し,それが臨界揺らぎと非常に似た構造を持つことを見出した. 2. 動的不均一性の流動に対する応答を明らかにし,ガラス転移近傍液体のダイナミクス(構造緩和時間_<Tα>)やレオロジー(粘性率η)を決定する時間スケールと動的不均一性の空間的な広がりを特徴づける相関長ξとの間に以下のような動的スケーリング則が成立することを明らかにした. η(T,γ^^・)∝T_α(T,γ^^・)∝ξ^Z [z【similar or equal】4 in 2D and z【similar or equal】2 in 3D] (1) 3. 過冷却液体の非線形粘性率が以式に従うことを見出した. η(T,γ^^・)=η(T,O)/[1+T_η(T,O)γ^^・] T_η(T,O)=const.T_α(T,O) (2) 4. 液体がガラス状態に近づくにしたがって,自己拡散係数がStokes-Einstein則(D=k_BT/2πση)より何桁も大きくなる現象のメカニズムを明らかにした.
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