研究概要 |
平成10年度は,当初の予定通り,Ni_<33>Zr_<67>非晶質合金およびNi_<33>Zr_<67>結晶合金について中性子非弾性散乱実験を行い,精度の高い動的構造因子S(Q,E)を得ることができた.Ni_<33>Zr_<67>非晶質合金においても,Ni_<33>Zr_<67>非晶質合金と同様な"フォノン分散関係"が観測された.すなわち静的構造因子S(Q)の第1ピークまでは音響フォノン的で,それよりもQの大きな領域では光学フォノン的に変化していく様子が観測された.組成の異なる非晶質合金におけるS(Q,E)の詳細な比較検討については現在進行中である. 結晶合金には,顕著な光学モードピークが観測されたが,非晶質合金には全くみられなかった.非晶質合金の短距離構造は結晶と類似である,という回折実験に基づいた報告もあるが,ダイナミクスの観点からは類似性はほとんどないと考えている.結晶との違いについても,今後,詳細な比較検討を進める. SiO2ガラスの場合には,S(Q)の第1ピーク以降も音響フォノン的な振る舞いが観測されており,Ni_<33>Zr_<67>非晶質合金とは全く異なることが明らかになっている. アルカリ金属液体の"フォノン分散開係"は,エネルギー領域こそNi_<33>Zr_<67>非晶質合金よりもずっと低いが,Qが大きくなるに従って光学フォノン的になるという振る舞いは類似している.このことは,Ni_<33>Zr_<67>非晶質合金における原子配列の乱れは液体のそれに近い,ということを示唆しているのではと考えている.今後,Ni-Zr非晶質合金の組成依存や結晶との差異の検討にとどまらず,SiO2ガラスやアルカリ金属液体との違いに関しても考察を行い,Ni_<33>Zr_<67>非晶質合金における原子配列の乱れを定量的に捉えることを試みる予定である.
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