高分子の構造形成機構を分子レベルで解明するため、我々は短い高分子鎖(1本当り20セグメント)および長い高分子鎖(1本当り100セグメント)の分子動力学(MD)シミュレーションを行い、配向秩序構造の形成過程を解析した。高分子鎖のモデルとして、最も単純な内部構造を持つポリメチレン鎖を用い、メチレン(CH_2)は、一つの質点として扱った。分子力場として、DREIDINGポテンシャルを使った。シミュレーション手法として、速度Verletアルゴリズムを用い、系の温度を一定に保つため、Nose-Hoover法を使った。先ず高温においてランダムな配位を作り、次にそれを様々な温度に冷却した。100本の短い高分子鎖について、シミュレーションで得られたデータをグラフィック・ワークステーションで可視化し、さらに、配向秩序パラメタの時間変化を調べることにより、以下の結果を得た。 1. 高温(700K)でランダム状態にある高分子鎖を冷却することにより、配向秩序構造が形成される。 2. 配向秩序は、段階的に成長する。 3. 400Kにおいて、高分子鎖は六方充填構造をしているが、温度の低下と共に、六方相から斜方相へ転移する。 100本の長い高分子鎖の場合、短い高分子鎖の場合よりも、鎖端領域の構造が乱れていることが分かった。 今後は、長い高分子鎖のシミュレーション結果について、構造形成過程を詳細に調べるつもりである。また、「絡み合い」が構造形成に及ぼす効果を系統的に調べるため、さらに長い高分子鎖(1本当り500セグメント)のMDシミュレーションを行う予定である。
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