本研究ではゲルの体積相転移での膨潤・収縮の大変形ダイナミクスの研究を行った。従来のゲル体積相転移ダイナミクスの研究では「ゲルの弾性エネルギー」と「溶媒と高分子ネットワークの混合のエントロピーに起因する項」とから成る自由エネルギー汎関数を考え、それを最小とするような運動によりゲルの膨潤ダイナミクスを考えていた。本研究では高分子ネットワークに由来する弾性応力場と溶媒の流れとの動的な結合(応力拡散カップリング:溶媒の流れによって高分子ネットワークの歪み(応力場)が引き起こされ、その応力場自体が溶媒の流れを支配するという動的結合が高分子(粘)弾性体のダイナミクスにおいては非常に重要であると考え、応力拡散カップリングを取り入れたゲルの膨潤を記述する運動方程式を構築し、まず応力拡散カップリングモデル線形解析を行った。さらに、その方程式を有限要素法を用いて解くためのメッシュ(Delaunay三角形(2次元)、Delaunay四面体(3次元)要素による空間分割)を自動生成するプログラムを開発した。また有限要素法を用いて、応力拡散カップリングモデルを解くためのプログラムの開発を現在行っている。本年度はまず、二次元系でのゲルの体積相転移を3接点有限要素法、6接点有限要素法で取り扱えるプログラムの開発を行い、まだ予備試験の段階ではあるがチューブ状のゲルの体積相転移の実験で観測されている収縮過程に伴うバンブー状パターンを再現出来た。
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