本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 伸長する微小管を含むリポソームが、系の温度と小胞の浸透圧、微小管の長さをパラメータとしてどのような形状をとるかを、膜のジョイント-セグメントモデルを用いて解析した。この解析手段としてメトロポリス・モンテカルロ法を使用しており、熱揺らぎによるリポソームの形状転移を調べることができた。 シミュレーションの結果、実験系で観察されるφ形リポソームは微小管が伸長して膜面を押し出す過程における、過渡的な形状であることが分かった。すなわちφ形はエネルギー的に準安定な状態であり、時間が経てば基底状態であるロリポップ形に落ち着いていくことが明らかとなった。また膜面上における突起の形成には、微小管と膜面との引力相互作用は必ずしも必要なものではなく、リポソームの内部圧力が外部よりも大きくなること、あるいはリポソームの体積が一定値に保たれることが重要であることが分かった。 今後は膜面上における突起形成が、微小管の生長速度とどのような関係にあるかを調べる予定である。 なお本研究の成果は、日本物理学会第54回年会で口頭発表される予定である(1999年3月28日)。また学術雑誌“Journal of Physical Society or Japan"に投稿(1998年12月14日)され、1999年5月の同雑誌に掲載されることが決定している(1999年2月22日)。
|