本研究は、レーザー冷却法を導入し、通常の原子線を超低速度(約10cm/s)まで超冷し、レーザーマイクロ波二重共鳴分光法による超高分解能・超高精度のレーザー分光を実現することを目的としている。本年度は、まず、レーザー冷却とレーザーマイクロ波二重共鳴分光に必要なレーザー周波数安定化装置を製作した。科研費により、ファブリ・ペロー干渉計システムを購入し、製作した安定化電子回路と組み合わせて、レーザー周波数安定化装置の製作に成功した。また、現有の実験装置を改良し、アルカリ金属の原子線源を製作した。 本実験では、原子線の速度(レーザー冷却が行われていたかどうか)を知る必要がある。今回は、Doppler効果を用いて、原子線速度及び速度分布の測定方法を確立し、Smをテストとして、その原子線の速度と速度分布を測定した。また、希土類元素のSm、GdやDyなどの原子の同位体シフトと超微細構造を測定し、超微細構造定数や原子核位置における電子密度が得られた。さらに、マイクロ波技術を導入し、Li原子に対して、レーザーマイクロ波二重共鳴分光の実験に成功した。この実験から、^6LIと^7LIの2s ^2S_<1/2>基底状態の超微細構造の分岐エネルギー、そして超微細構造定数Aを高精度で決定した。これらの成果は、日本物理学会で、98年9月に発表され、また99年3月に発表される予定である。 本年度のこれらの実験によって、本研究の準備や予備実験がほぼ終了になり、来年度は、レーザー冷却を用いたレーザーマイクロ波二重共鳴分光を行う。
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