本研究は、レーザー冷却法を導入し、通常の原子線を超低速度まで超冷し、レーザーマイクロ波二重共鳴分光法による超高分解能・超高精度のレーザー分光を実現することを目的としている。今年度は、レーザー冷却における原子線速度の測定に必要な外部共振器型波長可変半導体レーザーを設計・製作した。そして、そのレーザーの特性を調べ、線幅の1MHz以下、波長可変領域の12nmという特性が得られた。 今回製作した外部共振器型半導体レーザーと昨年改良した真空装置、原子線源と組み合わせて、レーザー冷却のテスト実験を行った。まず、Rb原子線を生成し、高分解能分光の実験を行った。Rbのスペクトルを観測し、レーザー冷却の予備実験を行い、レーザー冷却用のピークやレーザー周波数などの条件を決めた。そして、Rbのレーザー冷却を行い、Doppler効果を用いて、レーザー冷却による減速された原子のDopplerシフトを測定した。そのDopplerシフトを用いて、Rb原子が通常の速度から約70m/sまで減速されたことが分かり、レーザー冷却による原子線の減速に成功した。また、高分解能レーザー分光については、高融点元素のLa、Ceの分光に成功し、超微細構造と同位体シフトが得られ、超微細構造定数や原子核の位置における電子密度などの基礎的なデータが求められた。今後は、レーザー冷却とレーザーマイクロ波二重共鳴分光を組み合わせて、超高分解能・超高精度のレーザー分光を行う。
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