平成10年度の研究の中心は1997年山口県北部の地震の動力学的解析のまとめであった。この地震では理論的グリーン関数と経験的グリーン関数を用いて独立な解析を行うことで、震源の周波数依存性を明らかにすることができた。さらに高周波の解析でも断層構成関係を推定し、すべり弱化率が高周波では大きいことを示したが、高周波だけからは、すべり量の正確な推定ができないという欠点も明らかになった。この結果は地震学会、米国地球物理学会で発表され、また論文は現在Geophysical Research Letters誌に投稿、審査中である。他にM6クラスの地震として1997年鹿児島県北西部の地震と1998年岩手県北部の地震の解析をはじめた。岩手の地震では経験的グリーン関数として用いうる余震を収録するために観測を行ったが余震は少なく、計器の不調などもあり、十分な記録は得られなかった。これらの地震の解析は来年度に持ち越される。この研究のために経験的グリーン関数法による断層すべり推定のツールを開発した。その結果、従来の強震計波形記録以外に、微小地震計記録も解析に用いられるようになった。この成果は1998年上高地群発地震で発揮された。この際には最大M5の地震が発生したのでこの震源過程の解析もをこのツールを用いて行った。この群発地震でも臨時地震観測を行いM5の地震の記録を収録することができた。このデータと他の定常観測点の記録からこの地震が1秒以上の前駆破壊を伴うこと、さらに小さなM4クラスの地震の解析とあわせて、この群発地震活動の個々の地震が不均質性に富むことがわかった。この結果は地震学会で発表された。
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