本研究の最終目的は阿蘇火山を対象の一つとして、活火山の火口への物質供給路系からの地震学的な情報を得ることにある。そのための手段として、人工地震の後続波の高密度アレイ観測が中心に位置づけられている。 平成10年度は当初の予定通りに、第五次噴火予知計画によって実施された人工地震実験の観測を行った。この人工地震実験に先だって、人工地震実験の発震点と観測点との最適な位置関係を見積もるために、この波動場の数値実験を行い、測線計画を決定した。その成果を平成10年度地球科学関連合同学会春期大会で発表した。人工地震実験は平成10年11月末に行われ、3ヶ所の高密度アレイ観測網によるデータ取得が成功をおさめた。この高密度アレイ観測網の構築にあたっては、本研究費の調達による測量機器を用い、さらに観測の消耗品の調達も本研究費より行った。 当初の計画では平成11年度に解析の最終段階となるように年次計画を組んでいるので、本報告書の作成時点では本解析の前段階のデータ整理作業(初動到来時刻の整理、および最大振幅の分布などの整理)を行っている。しかし、データの整理の過程では、活動火口の直下に発生源が推定されるいくつかの明瞭な後続波が記録に現れ、さらに活動火口周辺では回折波と推測される初動波形の異常も認められている。これら観測された諸現象は、実験前に実施した近似的な数値実験からも予想されていたものであり、さらに解析を進めてゆくことによって当初の計画通りに活動火口の物質供給路系の検出が出来る見込みである。 これらの解析(整理)結果については、研究会および学会等で随時発表する。
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