研究概要 |
地球形成初期での大陸地殻の形成は,地球の化学進化に大きな影響を与えたと考えられる.前年度の研究では,初期地球で生じた現象が再現されたと考えられる1500万年前の西南日本の状況を計算機シミュレーションによって再現し,マグマ活動のプロセスを解明することを試みた.その結果, 1.沈み込むプレート物質の大規模な融解が引き続き起こることは考えにくく,大陸地殻を形成したマグマは,マントル中で高マグネシウム安山岩に近い組成のマグマとして形成した. という結論が導き出された. しかし,初期地球ではプレートの温度が高く,プレート間でのカップリングが非常に強かった可能性があり,またプレートを沈み込ませるスラブの負の浮力も弱かったと考えられる.従って,初期地球ではプレート間のカップリング力はプレート運動の形態をコントロールしている重要なファクターの一つであったと考えられる. そこで,今年度は前年度で初期地球のアナロジーの場として考えた西南日本に関して,そこでのプレート間のカップリング力の推定を,前年度と同様の計算機によるシミュレーションによって試みた.また同時に比較的高温の上磐側プレート内での変形も推定した.その結果, 1.プレート間のカップリング力は,せいぜい30MPa程度と静水圧と比べて1〜2桁小さい. 2.上盤側プレートに発達すると予想される付加帯では,温度から推定される粘性率では大規模な粘性的な流動が発生する. ことが明らかになった.このことから以下が結論づけられる. 1.比較的高温であったと考えられる初期地球においても,プレート間のカップリングは現在と同様であった. 2.カップリング力が強くなったような場合は,上盤プレートで大規模な変形が生じ,流動的な沈み込みが生る可能性がある.
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