研究概要 |
研究代表者は強震加速度記録をスムージングして得られるエンベロープをデータとしてインバージョンにより震源断層面上の高周波地震波生成過程を推定する手法を既に開発している。しかし,断層面上の各点(実際には震源断層面を分割したメッシュ)の破壊時刻をモデルパラメーターに含める場合,問題の非線型性が強くなり,非線型問題を線型化して繰り返しとくアプローチでは初期モデル依存性が問題となる。この問題を克服するため,線型化の手続きを必要としない遺伝的アルゴリズムを適用し,観測エンベロープを最もよく再現する震源モデルを求めるプログラムを作成した。まず手法のテストのため,1995 年兵庫県南部地震のデータセットを使い,仮定した震源モデルに対する合成エンベロープを観測エンベロープとして作成したプログラムを適用し,どの程度真の震源モデルを再現できるかを確認した。その結果,(1)遺伝的アルゴリズムを使ったプログラムにより,エンベロープの合わせ込みは非常に良好に行うことができる。(2)グリーン関数が完璧な問題であることを考慮すると,解の再現性にはやや不満が残る。エンベロープの合わせ込みが非常に良好であるにもかかわらず解の再現性に問題があるという結果は,手法の問題というよりはデータセットの持つ情報量の限界であると考えられる。各メッシュの破壊時刻を既知とし,重み(加速度放射強度)のみをモデルパラメータにして解かせると真の解をよく再現する,という比較実験の結果かもこのことを示唆する。これより各メッシュの破壊時刻を含めた高周波地震波生成過程を精度良く推定するには多くの観測点数,良好な観測点配置を持ったデータセットが不可欠であることが明らかとなった。
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