研究概要 |
テストフィールドとして選択した諏訪之瀬島火山の火口近傍の3点に気泡型傾斜計,山麓の1点に気泡型傾斜計および広帯域地震計を平成10年10月下旬に11日間をかけて設置と調整を行ない,短時間傾斜変動を伴う火山性微動の観測を開始した.データ収録媒体の交換および機器保守は,現時点で平成10年12月に1回実施し,現在,次のデータ収録媒体交換および保守(平成11年3月中旬)を直前に控えている. 回収されたデータを処理した結果,現時点では本研究が対象としている明瞭な短時間傾斜変動は捉えられていない.設置調整時の火口は,多量の火山ガスを連続的に放出しており,火道開放の状態にあったと考えられる.また1回目のデータ回収時も設置調整時と火口の状態は同じような状況であり,大道開放の状態は継続していたと推定される.この間,爆発は発生しておらず,本研究で想定したマグマの上昇,下降に伴う火山体浅部の帯水層との接触はなかったために,明瞭は短時間傾斜変動を捉えることができなかったことも考えられる.平成11年1月上旬に2回爆発が発生するとともに,火山灰放出が気象庁より報告されている.観測機器が順調に稼動していれば,次回回収予定のデータには,この一連の噴火活動の観測データが含まれており,短時間傾斜変動が捉えられている可能性がある. 一方,平成10年10月の観測機器設置および調整期間中は,諏訪之瀬島火山では有感のA型地震が2回発生した.本研究で設置した広帯域地震計のデータと,同期間に実施された第3回諏訪之瀬島火山集中総合観測の地震観測のデータを合わせて震源決定を行なった結果,有感のA型地震の震源は火口直下の深さ1kmと火口から東に約2kmの深さ2kmに決定され,マグニチュードは2.6と2.5であった.このほか,無感のA型地震が8個決定された.いずれも火口直下もしくは火口より東側に震源が決定されている.
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