本年度は、PC UNIX(FreeBSD)ベースの安価で大容量の解析システムを構築し、黒河流域における地空相互作用に関する日中共同研究HEIFE(1991-1993)で得られたデータを乱流変動データも含めて、ほぼすべて収集した。収集したデータを含む資料を用いて、渦相関法で熱・水蒸気輸送量を求める際の誤差と解析法について検討した。またその結果を活かして、代表者が参加したGAME-Tibetでの乱流輸送量の計算を行った。 空間分布の解析に関しては、現在大きな進展は見られていないが、HEIFEでの自動気象観測点のデータのうち、砂漠と礫砂漠の観測点のデータの夏期の解析からは、以下のような暫定的な結果が得られている。 1. 日変化が非常に強く現れるため気温は風速よりも遠くまで相関が及ぶ。 2. 風速の相関は、例えばコスペクトルが0.5(相関係数0.7に相当する)を基準に考えると、解析範囲内(36km以内)ではそれらは日変化よりも高周波数であり、たとえば、6kmの距離で約3時間の周期に相当する。おおざっぱに言って、距離が2倍になると相関のある周波数は半分になるという関係がありそうだ。 今後さらに解析を進め、これら一般気象要素の統計的な性質を用い、熱・水蒸気の乱流輸送量の空間的な代表性を調べていく。また、GAME-Tibetの観測データは、同計画が広域を対象として計画されているため、観測地点間の距離が遠く、上記のような空間分布の解析には不向きであることがわかった。しかし、乱流変動の長時間に及ぶ時系列が得られているので、そこから水蒸気と気温の乱流変動は、どちらもMonin-ObukhoVの相似則に従うが、まったく同型とはならず、水蒸気変動の方が鉛直輸送に関わらない変動が多いことが分かった、これらは各々のソースの水平分布の違いを反映していると考えられるので、上記水平分布の解析となんらかの関係を持つことが期待される。
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