地球下層大気を中高緯度帯と赤道域とに2分する「亜熱帯前線帯」は、緯度・高度および季節・年々の全てにおいて極めて変動が大きく、日本付近では特に梅雨・秋霖季に活発化して雲団や中間規模低気圧などの特徴的なメソスケール現象を生む。本研究の目的は、車載型Sバンド境界層レーダーを用いて、滋賀県信楽町(京大MUレーダー・Lバンド境界層レーダー・ミリ波気象レーダー・天頂C/Ku帯気象レーダー)、東京都小金井市(通総研境界層レーダー)、和歌山県潮岬(京大防災研ドップラーソーダー)の周辺に投入して、亜熱帯前線帯メソスケール擾乱に対するこれまでにない機動力を持った観測を実施することにある。 本年度前半はまず滋賀県信楽町の信楽MU観測所において、Sバンド境界層レーダーを無人で自動観測可能とするための、各種ソフトウェアの開発を行った。並行して、MUレーダーとの同時観測を行い、大気境界層から下部成層圏に至る連続した風速の高度プロファイルを得ることができた。次いで、9月中旬から1月初旬までの約4ケ月間、和歌山県潮岬の京大防災研潮岬風力実験所にSバンド境界層レーダーを搬入し、防災研所有のドップラーソーダーと同時観測を実施した海陸風に対応すると考えられる風速の変化などが観測されている。その後は、Sバンド境界層レーダーとドップラーソーダーの両方を信楽MU観測所に搬入し、同時観測を実施している。これまでに、約1時間の特徴的な周期を持った風の振動現象などが観測されている。
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