海底孔内計測と掘削試料の統合によるプレート沈み込み帯の現行地質過程の解明

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10740237
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 斎藤 実篤 東京大学, 海洋研究所, 助手 (40292859)
• キーワード: 国際深海掘削計画 / プレート沈み込み帯 / 孔内計測 / 堆積物物性

研究概要

本年度は国際深海掘削計画(ODP)で得られた掘削コアデータ・孔内計測のデータ、および千葉県内で採取された掘削コアと坑井データの収集・整理・解析を行なった。
ODPデータに関してはバルバドス、コスタリカ、南海トラフ、オレゴンの4海域を研究の対象とした。データは実際に研究航海に参加して取得したものの他に、書籍、CD-ROMなどの記録媒体、インターネットによっても入手した。収集・整理したデータの品質を検査した後に、コアの岩相、変形構造、流体組成と孔内計測データとを精密に対比する作業、孔内計測データを各掘削孔ごとに精密に対比する作業を行なった。この作業によって、以下のことが現在までに明らかになった。
1) プレート沈み込み帯における孔内計測データを坑井間で精密対比することにより、コア試料では成し得なかった、堆積物の脱水量の定量化を高分解能で可能にした。
2) バルバドスのプレート沈み込み帯で、デコルマ帯における脱水速度、流体移動の最小見積値を求め、従来コアの物性計測から得られていた透水性よりも1桁大きな透水性をもっていることが判明した。
これらの研究成果は、平成10年7月に台湾で行なわれた、米国地球物理学連合(AGU)西太平洋地球物理学会議、平成10年12月にサンフランシスコで開催されたAGU秋季大会にて研究発表を行なった。これらの研究成果は現在海外学術雑誌へ投稿中である。
プレート沈み込み帯における堆積過程の解明と,コアと孔内計測を統合した高分解能研究手法を確立するために、千葉県内で採取された掘削コアと坑井データを利用した研究を開始した。今年度はコアの記載・分析,物性計測,孔内計測の基礎データの取得と比較を行った.

研究成果

• [文献書誌] 木村 学・斎藤実篤: "世界の沈み込み帯と日本列島-浸食と成長のテクトニックバランス" 科学. 68. 42-49 (1998)
• [文献書誌] Saito,S: "Major and trace element geochemistry of sediments from East Greenland Continantal Rise: An implication for sediment provenance and source area weathering" Proc.ODP,Scientific Results. 152. 19-28 (1998)
• [文献書誌] Moor,J.C.他19名: "Consolidation patterns during initiation and evolution of a plate-boundary decollement zone: Northern Barbados accretionary prism" Geology. 26. 811-814 (1998)
• [文献書誌] Taira,A.他10名: "Nature and growth rate of the Northern Izu-Ogasawara are crust and their implications to continental crust formation" The Island Arc. 7. 395-407 (1998)
• [文献書誌] Goldberg,D.and Saito,S.: "Detection of gas hydrates using downhole logs" Geological Society of London,Special Publication. 137. 150-155 (1998)
• [文献書誌] Silver,E.,Kimura,G.,Blum,P.and Leg 170 Shipboard Party: "Proc.ODP,Initial Repots,170" College Station,TX(Ocean Drilling Program), 458 (1998)
• [文献書誌] Moore,J.C.,Klaus,A.,and Leg 171A Shipboard Party: "Proc.ODP,Initial Reports,171A" College Station,TX(Ocean Drilling Program), 106 (1998)