東北日本の活動的な火山である秋田焼山火山、北八甲田火山、鳴子火山、西岩手火山、蔵王火山について水蒸気爆発噴出物の調査および試料採取を行った。また、すでに荒井(1998)により地質調査が行われている恵山火山の試料採取も行った。これらは東北本州弧の脊梁帯に位置する火山である。地質調査の結果、各火山とも、水蒸気噴火は最近千年程度の間にかなり高頻度で発生していることが明らかとなった。水蒸気噴火の際には地下で熱水変質作用を被った物質が噴出している。幾つかの火山(秋田焼山火山、八甲田火山、西岩手火山、蔵王火山)では、X線回折や微小X線回折、走査型電子顕微鏡によって、共通の高温酸性変質鉱物(パイロフィライト)が見いだされている。パイロフィライトは地表では安定に存在せず、数百〜1km程度の深さで生成する鉱物であることから、水蒸気爆発の発生深度もその程度の深さであると考えられる。また、この鉱物はpH2程度の酸性熱水により生じるので、水蒸気噴火に関係した熱水も、酸性熱水と考えるのが妥当であろう。このような酸性で数百〜1km程度の深さで発生する水蒸気噴火は、山体中央火口におけるものである。一方、1997澄川水蒸気爆発のように、山麓や山腹で発生する水蒸気噴火噴出物を同様に調査したところ、比較的低温で、弱酸性〜中性熱水の変質鉱物からなることが分かった。これは、八甲田火山の酸ヶ湯付近でも確認された。以上の成果は1998年度の火山学会等で発表を行っている。
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